大判例

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東京高等裁判所 昭和45年(ラ)817号 決定

抗告会社代表者は、「原決定を取り消す。本件競落はこれを許さない。」との裁判を求め、その理由として述べるところは別紙に記載のとおりであり、その要旨は、本件のごとく債権者が同一の債権の担保として数筆の不動産のうえにいわゆる共同根抵当権を有し、かつ、その登記を経由している場合には、共同抵当の対象たる不動産全部につき同時に競売申立てをなすべく、そのうちの一部のみを任意に選択して競売の申立てをすることは違法である、というのである。

よつて案ずるに、共同抵当ないし共同根抵当が設定されている場合には、一個の債権が数筆の独立した不動産のうえに成立した数個の抵当権によつて不可分的に担保され、抵当権者はその対象である数筆の不動産の全部またはそのうちの任意に選択する一部につき自由に抵当権を実行できることをたてまえとし(民法三七二条・二九六条)、ただ共同抵当ないし共同根抵当実行の際における代価の配当、次順位者の代位、代位の登記につき民法三九二条、三九三条に特別な制限規定があるにとどまる。しかるに、本件競売に関しては、右にあげた特別な制限規定に該当することはないから、抵当権者たる株式会社栃木相互銀行が根抵当権の実行にあたり共同抵当の対象たる不動産中の一部を任意に選択し、競売の申立てをしたことには何らの違法もないというべきである。また民法三九二条の解釈につき、当事者間の特約によつて同条の適用を排除することができ、しかるときは共同抵当ないし共同根抵当の登記は、抵当権者の自由選択権の制約を公示し、不動産所有者に同条の利益を与える意義をもつものと解する余地がないでもないが、仮に当事者間に右のごとき特約があつたからといつて、抵当権者が根抵当権の実行にあたり共同抵当の対象たる不動産全部につき同時に競売を申立てねばならぬいわれはないから、前記解釈の是非を論ずるまでもなく、所論は失当たるを免れない。

(多田 上野正 岡垣)

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